戻る | 進む | 目次

 そう。NONET。
 第8寮の住人はPCの非合法部隊『NONET』のメンバーである。
 現在男性5名、女性5名の10人構成。PCの合法部隊である自衛団では対応
仕切れない強化亜生命体の駆除と、血星石の収集を仕事とする。
 そしてもうひとつ『パワーストーンマスター』でもあった。
 強化亜生命体には普通の人間はまず対峙することはできない。が、石と同調
し、力を引き出すことのできるパワーストーンマスターならそれは可能である。
 翔はもちろん、まだあどけなく小さなアテネもパワーストーンマスターであ
る。絵麻もそうだ。
 パワーストーンマスターは自然に関わる力を引き出すのだが、絵麻は少し変
わった能力の持ち主である。
 虹色の光を操るのだ。光は時にバリアとなり、時に癒しの力となり、また、
破壊の力ともなる。絵麻本人が不安定なため絶対的な力とは言えないのだが、
こんなに万能なケースは研究者である翔の視点から見ても稀なのだという。
 そして、絵麻はなぜか武装集団側から『平和姫』と呼ばれている。
 かつて、この世界を破滅の危機から救った平和姫。
 その伝説的な人物と、姉に殺されてこの世界に落ちて来た絵麻にどんな接点
があるのか……。
 閑話休題。
「買いだし? 面白そう!」
 アテネの青い目がきらきら輝く。
「ねえ、ね。お兄ちゃんも行くよね? みんな行くよね?」
「そろそろ障害者手帳の更新時期なんだよな……オレ、行こうかな」
「あたし、薬買いに行く。信也、荷物持ってね」
 リョウが部屋の反対側にいた幼なじみ、秋本信也に話を振る。
「って、何で」
「いいから」
「絵麻はいろいろ見たいんでしょ? リリィと唯美は?」
 リリィは『手芸用品が見たい』とメモ帳に書いて示した。
「えっと……アタシも買い物する。封隼、ついてきなさいよ」
「……何でおれが」
 あっと言う間に、話がどんどんまとまっていく。
「翔が図書館で、後は哉人だけど」
「ぼく? ぼくは……」
 話を振られた哉人は、気乗りしない顔だった。指先が緩慢にキーボードを叩
いている。
「え? 哉人くん行かないの?!」
 アテネが大切なぬいぐるみを隠されたような声をあげる。
「こいつ、何か絶対中央でやってんだぜ」
 シエルが意地悪く笑い、唯美がにやつきながら同意している。
「って、勝手に人の過去決めてんじゃねーよ!」
 哉人が座っていたソファから躍り上がってシエルに殴り掛かる。が、今回は
シエルの方が体勢がよかった。ひょいっとかわされてしまう。
「とにかくっ、ぼくは……」
「哉人くんも行こうよ? みんなで行ったら楽しいよ?」
 哉人は何か反論しようとしたのだが、それにかぶせてアテネが青い目をいっ
ぱいに見開いて、寂しそうに哉人をのぞき込む。
「…………」
 勢いがなくなった哉人に、シエルが声を裏返して追い打ちをかける。
「行くんだね? 哉ちゃん♪」
「ちゃんづけするなっ!!」
 漫才のようなやり取りに、絵麻も、他のみんなも笑ってしまった。
戻る | 進む | 目次
Copyright (c) 1997-2007 Noda Nohto All rights reserved.
 
このページにしおりを挟む
-Powered by HTML DWARF-