1.中央首都の休日 北部、オリンポス半島。 闇の中で、アレクト、メガイラ、ティシポネの3人が話し合いをしていた。 「私たちとしたことが、パンドラ様にはずいぶんとご迷惑をおかけしてしまい ましたね」 「平和姫ごときにやられるなんてな」 「でも、ティッシー怖かったよ! 怖かったよ!」 ティシポネがきーきーと声をあげる。 「元に戻していただけて、パンドラ様には感謝しなくては」 「私たちにはこれがあるからな」 アレクトが自分の額に埋め込まれた黒水晶を押さえる。 アレクト、メガイラ、ティシポネ……『エウメニデス』はパンドラが作り出 した亜生命体だ。 ただ、他の獣たちと違ってパワーストーンを核に使っているため、人格と知 能を備えている。額の黒水晶がその核だ。 核を破壊されない限り、術師のパンドラさえいれば無限に再生できるのであ る。 「アレクト、ティシポネ」 メガイラが静かな声で他の2人を呼ぶ。 「なーに? メガイラ」 「パンドラ様にお詫びをしなくては、と思うのです」 「ごめんなさいするの?」 「謝ってすむお方じゃないだろ」 こつんと、アレクトがティシポネの頭をこずく。 「私は血星石を探します。パンドラ様の復活のために」 メガイラが見えない目を伏せたまま、静かに言った。 「それでは、私はあいつらの邪魔をするとしよう」 アレクトがにやりと、歪んだ笑みを見せる。 「んとねー、ティッシーどうしようかな」 ティシポネはぱたぱたと闇の中を走り回っていたのだが、思いついたような 顔をして。 「ティッシー、血の花姫にあげる!」 「血の花?」 ティシポネはにこにこ笑いながら。 「この国の真ん中に血の花咲かせるの。どかーんって!」 「爆弾か」 「なるほど。いいかもしれませんね」 2人の賛同を受けて、ティシポネは口が耳までさけそうに笑って。 「じゃ、ティッシー行ってくるね!」 ぱたぱたと、闇の中から姿を消した。