次の場面は薄汚れた路地裏だった。 街灯も何もない、真っ暗な道。 ところどころに汚物や、動物の死骸が転がっている。そんな場所。 そこに、1人の男の子が座り込んでいた。 寒い夜なのに、着ているのはぼろぼろのTシャツと半ズボンだけだ。 寒さから逃れるように膝を抱えて、その膝に顔を埋めるようにしている。 少年の目は、鮮やかな蒼。 その目の回りに、指でぎゅっとつかまれたような赤いアザがあった。 見れば、全身に殴られたようなアザがある。 「……」 男の子の蒼い目は何も見ていないようだった。 と、そこに若い女が声高にののしる声が聞こえてきた。 「どうして、アタシがあの蒼目のガキの面倒をみなきゃならないのよ」 聞こえて来た声に、少年の蒼い目が悲しげに揺れる。 彩さん、となだめるような男の声。 それに構わず、若い女性はののしり言葉を吐き続ける。 「別に欲しくて生んだ子供じゃないわ」 「けれど……」 「アタシの方が被害者なのよ?! あんな子、欲しくなんかなかったもの!」 「だからって暴力は……」 「アタシはアイツの目を見てるとイライラするの。あの奇妙な蒼い目をね」 男の子は、母親から虐待を受けたのだ。 男の子の綺麗な蒼い瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。 「おかーさん、どうして……?」 涙で濡れた瞳は、悲しいほどに綺麗だった。 「ぼくが悪いんならあやまるから。この目が、いけないの? ぼくの目があおいから……」 男の子がふと視線をめぐらした先に、割れたガラスの破片が転がっていた。 「……」 無言で、男の子はそのガラス片を拾い上げる。 「この目がなくなれば……おかーさん、ぼくを好きになってくれるよね?」 男の子は泣きながら自分の目にガラス片をあてがった。 「おかーさん、ぼくを好きになって……」 蒼い瞳から、対照的な赤い血が噴出する。 赤の中に混ざった、透明な雫。 そこで、場面がぱちんと切り替わった。