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 次の場面は、焦土だった。
 荒らされ、焼け焦げた大地。累々と積み重なっている黒焦げの死体。
 その死体を前にして、1人の少女が嗚咽を噛み殺していた。
 13歳前後だろうか。長いチョコレートブラウンの髪が風になぶられている。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
 しゃくりあげながら、少女は言葉を繰り返す。
「みんな、あたしが殺したんだ……あたしは守らなきゃならなかったのに……」
 少女の紫色の瞳が悲しげに歪む。
「あたしが殺した……守るべき人達を! みんなみんなみんなみんな!!」
 焼け焦げた大地に崩れ落ちて泣き叫ぶ少女。
 その少女に、後ろから遠慮がちに声がかけられた。
「……リョウ?」
 振り返る少女。その視線の先に、少女と変わらない年齢の少年がいた。
 こげ茶の髪と瞳。着ている服はところどころ裂け、血だらけになっている。
 右手に少年には不釣り合いに長い長剣が握られていて。その刃にも血がべっ
たりとこびりついていた。
「信也?!」
 涙をふいて、少女が少年に駆け寄る。
「生きてたの?! ケガ、してるの……?」
「ああ……まあな。ここ、救護所だって聞いたけど。おじさんとおばさんは?」
 少女は表情を歪めると、首を振った。
「ここも襲われたの……」
「……そっか」
「ねえ、秋本のおばさんとおじさんは? 勇也は? 真也は?」
 今度は少年が表情を歪めて首を振る。
「俺の家、隣町とここと分けてる森の境目にあるだろう? 開戦のときに爆弾
放り込まれたらしくて……みんな、バラバラになってた」
「そんな……」
 少女の目に再び涙が浮かぶ。
「そうだ、ねえ、正也は? 信也と正也、今日一緒にでかけてたんでしょ?」
「……」
 少年は言葉に詰まったように何も言わなかった。
「嘘でしょ?! 正也もいなくなっちゃったの?! ねえ、冗談だって言ってよ!」
「……」
「いつも一緒の、双子の兄弟だったじゃない。冗談でしょ?! ねえってば!!」
「……悪い」
 少年の声が、ぽつりと地におちる。
「俺のせいなんだ。俺のせいで正也は……」
 少女はぺたりと地面に座りこんだ。
「どれだけの人を亡くせばいいの」
「リョウ……」
「救護所が全滅したのはあたしのせいよ。あたしが、あたしが……!」
「リョウ?」
「あたしのせいなんだ! 町の人が死んだの、みんなあたしのせいなんだ!! 
自分だけが可愛かったあたしのせいなんだあっ!!」
「リョウ!!」
 泣きはじめた少女を、少年が抱きしめる。
 伝わってくる生きている人間のぬくもりに、少女の涙腺が切れた。
「ごめんなさい……ごめんなさい。ごめんなさい……!!」
 あふれた涙が、少年の衣服に染み込んでいた血と混ざりあう。
 少女を抱きしめる少年の頬にも、涙が伝っていた。
 そこで、場面がぱちんと切り替わった。
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