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【転章】

「よくやったわ、メガイラ」
  武装集団首領、パンドラが闇の玉座で有能な配下をねぎらっていた。
  豊満な肢体に薄布をまとい、サイドだけを長く伸ばしたダーティ・ブロンド
をゆるやかに空に舞わせている。
「このようなこと、誉れには値しません」
  玉座の下、膝をついてこうべを垂れるのがメガイラだ。その前には大量の血 
星石が積み上げられている。
「これで復活に少しは近づいたのかしら」
「御身復活もあと少しかと思われます。しかし、これは通常の血星石。
  ピュア・ブラッドにくらべれば力は弱いかと」
「そうなのよね」
  パンドラが不満げに頬を膨らませる。
「姫、怒っちゃダメだよ。お肌が荒れちゃうよ?」
「ティシポネ!」
  玉座の下の方にひかえていた黄色い髪の子供が、無邪気に言う。
  横にいた赤毛の兵士があわててたしなめている。
  が、パンドラは全然意に介していないふうで。
「あらティシポネ。心配してくれるの?」
「うん!  だってティッシーは、姫の遊び相手だもん!」
「それじゃあティシポネ、私と遊びましょうか」
  パンドラは玉座をすべりおりると、ふわりとティシポネの横に着地した。
「はーいはい!  何して遊ぶ?  人間ダーツ?  血の池プール?」
「外に行きましょう」
  パンドラは赤い唇の端をつりあげて笑った。
「そうして、あの娘を捕らえて来ましょう。
  私の復活の妨げである『平和姫』を……」
  パンドラの湖面のように青い瞳が、さっと血のような赫を帯びる。
  その目に映っていたのは、黒髪の少女。
  肩につくかつかないかの黒髪と茶水晶の目をした、あの少女の姿だった。
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