鈍い金髪と緑色の目をした男の子は7歳くらいで、カノンにそっくりだった。 「レノン」 「その女の子、誰?」 「絵麻のこと? 新しい友達だよ」 カノンはあっさり言うと、レノンと呼んだ男の子の髪をくしゃくしゃに撫ぜ た。 「そんな不安そうな顔しないの。お姉ちゃんはどこにもいかないから」 「お姉ちゃん?」 「うん。この子、あたしの弟。レノン、お姉ちゃんにご挨拶は?」 「はじめまして……」 男の子――レノンはしばらくもじもじしていたが、カノンにうながされると その小さな手を差し出した。 「レノン=リュクルゴス、です」 「深川絵麻だよ。よろしくね」 差し出された手を、絵麻は握り返した。 小さくて、暖かな手。 レノンがはにかんだような、あどけない笑顔を見せる。 「そういえば、カノンってご両親は?」 「両親はあたしが12歳の時に死んだのよ。まだ3つのこの子遺してね」 カノンは弟の髪をごしごしと撫ぜた。 「だから、あたしはレノンの姉さんだけどお母さん。あたしがいなくなると、 レノンは不安になるみたいでね。昼は孤児院に預かってもらってるの。 どっちにしろ、家を借りるだけのお金はなかったし」 「そうなんだ……いけないこと聞いたかな」 「そういう絵麻のご両親は?」 絵麻は思わず、リリィと目を見合わせた。 絵麻が『別次元の住人』だという話は当然のことながら伏せられている。 もっとも、話したところで信用する者はいないだろう。現実にシエルたちを 説得するのにかなり時間がかかった。 「あのね……その……いないの」 「あれ? 絵麻ももうご両親いないの?」 「絵麻も、って?」 「第8寮のみんなもご両親いないのよ。みんな武装集団のせいで亡くなってて」 「え……」 絵麻はリリィを見た。 碧の目が、僅かに憂いを含んで絵麻を見つめ返す。 リリィだけじゃない。 翔も、信也も、リョウも。今まで接してきた人みんな……。 「そうなの……」 「あたし達、もっと強ければいいのにね」 唐突に、カノンが言った。 「え?」 「強ければ何も失わない。例えば、学会でよく議論されてるでしょ? パワー ストーンと同調できる人間!」 絵麻は思わずむせてしまい、口に手を当てた。