「さっき持ってただろ」 「爆発でふっ飛んだんじゃ?」 「吹っ飛んだ……って」 絵麻は辺りを見回した。 ちなみにここは第8寮の裏庭。森と隣接した中に教室ほどのスペースが空い ていて、一面緑の下草に覆われている。 この中にまぎれたペンダント……探すのは手間取りそうだ。 「うわあ、お祖母ちゃんの形見のペンダント!!」 「ンな大事なものならしまっとけって」 「ペンダントの石がパワーストーンなんだからしょうがないでしょ」 唯美は肩をすくめると、地面に視線を走らせた。 「爆風がこっちに流れたから、多分建物の方に……」 その時だった。 建物の陰から、金髪の少女が出てきた。 新緑色の切れ長の瞳。肌は雪のごとき白で、輝くばかりのフェアブロンドは 色あせたリボンで束ねられている。 紫色のショールをはおった少女は、4人の所まで歩いてくると、その白い手 に持った物を絵麻に差し出した。 青い石のついた、銀製のペンダントだ。 「あ、わたしの」 「・・・・・・・・」 金髪の少女は形のいい唇を動かしたが、不思議なことに声はしなかった。 「……」 「リリィ、悪いんだけど」 「・」 場が沈黙してしまったのに気づくと、少女 ──リリィはスカートのポケット からメモ帳とペンを取り出し、何事か書き付けた。 そして、それを唯美たちに見せる。 「何?」 「そこに落ちてたの拾ったんだって」 リリィは続けて文章を書き付けると、その紙を破いて唯美に渡した。 「え?」 「『Mr.PEACEより連絡有り。先日の北部での騒動の報告書をまとめて 4時までに提出せよ』……ええっ?!」 「今、何時?」 リリィは指を3本立てた。 「3時?!」 「1時間でまとめろってか?」 「急がないと」 「絵麻、次までに力制御できるようになってね」 3人はあわてて第8寮の方へと走って行った。 「……」 「・・・・・・・・・・」 リリィが絵麻の袖をひいて、建物の方に促す。 「戻ろう、って?」 こくんと頷いて、リリィは歩き出した。