例えば、パワーストーン。 翔は絵麻に「『マスター』の素質がある」と言った。 けれど、絵麻は力を満足に発動できないのだ。 他人の能力当てはできるし、波動を感じることもできる。 しかし、それ以上のことはできなかった。 「いい? 石に意識を集中するの」 「こう?」 「ちゃんとやってる? 波動感じないわよ」 本日講師(?)の唯美が声を荒げる。 「やってるんだけど……」 「結果でなきゃ意味がないの」 「……」 「唯、あんまりいじめんなよ」 「ほどほどにしとくんだな」 横で見ていたシエルと哉人が声をかける。 「思い詰めて自殺しそうなタイプだし」 「怖いこと言ってんじゃないわよ」 「お前の存在のが怖いよ」 切り返した哉人の言葉に、シエルが大笑いしている。 この3人は年が近く、比較的性格も合うということでチームを組んでいるん だそうだ。 男子2人の中に唯美がまぎれているのは珍しいと思ったのだが、すぐにそう 感じなくなった。 唯美はものすごく強気で、勝ち気な性格をしているから。 いちばん明るいのは(意外にも)初対面で反対してきたシエルで、大抵楽し そうにしている。 逆に哉人は冷めた性格の持ち主で、怜悧な印象だ。 「ほら、さぼらないの。もう1回!」 「はい……」 「今度はイメージしながらやってみな。光のイメージ」 「シエル、助言するんだったらアンタが教えてよ」 「今日オレの当番じゃねーもん。金くれるんならもっと教えるぜ」 指を丸くして『お金』のジェスチャーをする。 これ以上怒らせるのも嫌なので、絵麻は言われた通りに集中することにした。 (えっと、光のイメージ……あの時の虹色……) 手にした祖母の形見、青金石のペンダントに光のイメージを浮かべる。 と、淡い色の光が石に宿った。 「あ」 「できた」 「そう、そのまま、力を強めてみて」 言われた通り、絵麻は今度は光の広がりをイメージしてみた。 光は虹色の渦を巻いて広がり、そして……。 ばぁん! 轟音とともに、絵麻の手の先で派手な火花が散った。 「きゃっ!!」 「え……」 思わず唯美が腕を顔の前にかざしてかばう。衝撃に青金石が吹き飛んで、爆 風が哉人のバンダナと、シエルの腕の通っていない右袖をはためかせた。 「絵麻!」 「こんな町中で爆発騒ぎ起こすなよ!! どう言い訳するんだ?!」 「ご、ごめんなさい……」 力を制御できず、暴発させてしまったのである。 だいたいこんな感じだった。 何もできないか、暴発させるかのどちらか。 「またか……」 「どうやって不和姫しりぞけたの?」 唯美が呆れるのももっともな話だ。 制御がきかなければ、どんなに強い力があっても役にはたたない。 敵を滅ぼすことはおろか、自らを刃の前にさらしかねない。 「……」 唯美の言うことは最もだが、絵麻は半分泣き出しそうになっていた。 泣いても何の解決にもならないから泣かないけど、気分は落ち込んでいた。 (最悪……) 「あ」 ポケットを探って、絵麻は青金石がないことに気づいた。 「青金石、どこにやったっけ?!」