4.スターティング・オーバー 最初は、何も起きなかった。 それは、突然現れた。 絵麻を、彼女の胸にある青金石を中心に、虹色の光が湧き上がった。 それは竜巻のように絵麻をすっぽりと包んだ。 透明にかすむ彼女の中には、たくさんの光があった。 明るい光。暗い光。 それは、彼女が今まで受けてきた明るい感情と、暗い感情。 その光の中で、微笑んでいる絵麻の姿が光の粒子に浄化されて消えるの を、翔ははっきりと見た。 明るい光も、暗い光も。全てが絵麻と共に浄化されていく。 彼女の命と共に、全ての暗い感情を連れ去っていくように見えた。 「絵……麻……」 やがて、絵麻だった光は、他の光の奔流の中に混ざって、見えなく なった。 そして、その光は湧き上がった時と同じように、突然収縮した。 小さく縮み、人の形を取る。 そこに現れたのは、白いサンドレスの少女。 肩までの黒髪。澄んだ茶色の瞳。 胸元には、虹色の光をたたえた青金石のペンダントが下げられている。 翔のよく知っている姿。 だけど、翔の知る人とはまったくの別人。 『平和姫 』が、そこにいた。