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桜の雨が降る 1部3章1

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  3.正義の鉄槌  

3.正義の鉄槌

 優桜が目を覚ますと、辺りはすっかり明るくなっていた。台所の方からコトコトという音がする。
 優桜は慌てて布団の上に起き上がった。
「ユーサ、起きた?」
 台所からメリールウが顔を見せた。パジャマの上からエプロンをかけ、手にフライ返しを持っている。昨日はおろしていた赤い髪を、おろしてふたつに束ねていた。
「ご飯できたら起こそうと思ってたの。洗面所はそっちだよ」
 メリールウはフライ返しで部屋の一方を示した。
 優桜はパジャマから制服に着替えると、指示されたとおりに洗面所に行って顔を洗った。洗面所から出てくると、ダイニングテーブルの上にパンとオムレツが並んでいた。
「食べて? あたし、あんまり料理上手じゃないけど」
 言われて、優桜はくすりと笑った。確かにオムレツは端っこが焦げて破れている。
 パンもオムレツも例に漏れず味が濃かった。ミルクも砂糖も入れないというコーヒーは苦く、優桜は結局水をもらうことになった。
「ユーサの世界はこれより味が薄いの?」
 メリールウは不思議そうにしている。これで普通だというのなら、この世界の人は皆成人病になるんじゃないだろうか。優桜はそんなことを考えた。
「仕事って、何をすればいいの?」
 食事が終わって皿を洗っている時に、優桜はメリールウに聞いてみた。
「カンタンカンタン。これとおんなじ」
「これ?」
 メリールウは最後の皿を洗い終えると、にこりと笑った。
「お皿洗い」
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