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 一体、どちらのほうが正しいのだろう?
 武装集団に大切な人すべてを殺され、つながる全てを恨み続ける唯美。
 武装集団に所属していた殺人兵だが、今はPCについて任務をこなす封隼。
 どちらかが『善』で、どちらかが『悪』。
 でも、どっちが?
 唯美は封隼を恨んでいる。封隼は唯美とうちとけようとしない。
 どちらが、正しいの?
「絵麻!!」
 鋭い声が絵麻の思考をさえぎった。
 翔が険しい面差しを絵麻に向けている。
「ぼんやりしてないで。守り切れないよ?」
「あ、ごめん……」
 ここは戦局のど真ん中。
 絵麻、翔、リリィのトリオに唯美と封隼という組み合わせで、南部に派遣さ
れてきたのだ。
 前々回や前回より小規模な戦闘ではあったが、今回は不意打ちのうえ参加人
数が少ない。だから絵麻が前線にいるのである。
「とにかく、集中して。絵麻が自分を守ってくれさえすればなんとかなるから」
「うん」
 絵麻は心を静めて、ペンダントの石に集中した。
 淡い虹色の輝きが絵麻の周囲に満ちて行く。
 即席の防護壁だ。これで武装集団は絵麻よりこちら側には入れない。
 翔の狙いはその部分で、武装兵を絵麻より向こう側に集めておいて残りのメ
ンバーの能力で
叩くといった作戦なのだ。
「・・・!」
 リリィの、薄い刃に物質化された冷気が飛ばされる。
「猛空切(コンライ)!!」
 唯美が放った空気の刃が、武装兵たちの胸を切り裂いていく。
 完璧な作戦だといえたが、たったひとつ誤算が生じた。
 絵麻が防護壁を作れる範囲は彼女の周りだけ。
 大きく回りこみ、要となっている絵麻を狙った武装兵がいたのである。
「死ねぇっ!!」
 とっさのことで、絵麻の対応が遅れる。
「絵麻!」
 翔とリリィは目の前の自分の敵に集中していて、絵麻を助けることができな
い。
 絶体絶命の状況の中、それでも絵麻の体に敵の刃が届くことはなかった。

 ドゴッ!

 鈍い音が響き、つづいて何かが軋むような嫌な音がする。
 封隼が絵麻の前に回りこんで、両腕を交差させる形で敵の攻撃を受け止めて
いたのだ。
「封隼?!」
 しかし、この体勢では封隼が圧倒的に不利だ。
 敵がぎしぎしと武器に体重をかける。
「封隼! 危ないよ。逃げて!!」
 だが、ここで封隼がひけば、危害は絵麻に及んでしまう。
 封隼は一瞬絵麻を見て、それから唯美の方を見ると、小さく息をついた。
 そして、彼は交差させていた腕を解き、左腕だけで相手の攻撃を支えた。
 空いた右腕を絵麻の肩にかける。
「封隼?」
「……」
 次の瞬間、いきなり絵麻の視界がぶれた。
 乱雑に揺さぶられる感覚。視界がホワイト・アウトする。
「?!」
 次の瞬間、目の前には武装兵の集団から抜け出した安全圏の風景が広がって
いた。
 驚き、油断した武装兵を翔の雷撃が捕らえる。
 けれど、驚いているのは翔も、リリィも、絵麻も、唯美も同じ。
「今の……今のは?!」
「敵を片付けるのが先」
 封隼はそっけなく言って、武装兵の集団の中に身を躍らせた。
「今の……」
 血まみれの拳を振るう少年を、全員が驚きの目で見つめている。
 封隼は絵麻を連れて、一瞬で全く別の位置に移動してみせた。
 瞬間移動。
 唯美と同じ力。
「まさか……?」
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