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3.真実の皮肉

  戦闘終了後、自室に戻ろうとした封隼を翔が止めた。
「封隼。ちょっと来てくれる?」
「何で?」
「いいから。唯美も来て」
「なんでアタシまで」
「いいから!」
  翔がたまにやる、有無を言わせない調子である。
  こうなるとだいたい逆らえない。身長差で翔が圧倒的に勝っているのが原因
なのか、2人とも引きずられるようにリビングに来た。
  リビングでは出撃しなかったメンバーが思い思いにくつろいでいた。
  そのくつろぎを思いっきり破壊する発言を翔はした。
「2人は、姉弟じゃないのか?」
「……え?」
  思いがけない言葉に、場が凍りつく。
「バカ言わないでよ」
  いちばんに凍結が解けたのは唯美。
  首を振って、あきれたみたいに否定にかかる。
「何でコイツがアタシの弟?  武装兵じゃない?!  だいたい名前が違うもん」
  翔は無言でリビングのパソコン横に積んであったプリントアウトの中から一
枚の用紙を引っ張り出すと、唯美に渡した。
「『海封隼』って、単なる判別用の名前だよね?」
「判別用?」
「平たく言って偽名だよ。呼ぶ名前がないと不便だからってつける奴」
「それじゃ……」
  唯美は僅かに顔色を変えたが、すぐにかぶりを振った。
「違う!  アタシと弟は2歳年が離れてるの!!  コイツはアタシと同い年じゃ
ない。アタシに双子の弟なんかいない!!」
「封隼が15歳だっていうのが『推定年齢』だって言ったら?」
「?!」
 唯美は用紙の年齢の項目に目を走らせる。確かに推定年齢と書かれていた。
「人間は大人になればなるほど年の見分けがつかなくなるから、係が間違えた
可能性がある」
「何よそれ……PCが間違うわけが……」
「PCだって人間が運営してるんだよ」
  封隼は無表情に周囲を見ていた。
  自分のことが話題になっているのに、どこか悟っているような。冷めている
ような感じに絵麻には見えた。
「いい?  封隼に関することは、何もかも推定や仮定にすぎないんだ。だから
もっと現実的な定義が見つかれば、仮定はくつがえる。封隼、瞬間移動使った 
だろ?」
「!」
  瞬間移動──隼の血を引く者に与えられた特殊能力。
(どういうこと……?)
  絵麻は頭が真っ白になっていて、よく判別できなかった。
  唯美と封隼が姉弟?
  唯美は『お姉さん』なの?
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