「リョウを守ることで、彼女に必要とされることで自分が赦される気がしただっ て?! そんなキレイ事言うな!」 窓に映る信也の髪の色は――黒。 「正也……なのか?」 彼は剣呑な目で頷いた。 「そんな……」 6年前、自らが殺した弟。ここにいるはずがない。 「ここにいるはずがないんだよね。けど、ゆるせなかった。俺を殺したお前が のうのうとリョウと幸せになっていくのがゆるせなかった!」 バキンという音とともに、鉄格子とガラスが吹き飛ぶ。 「こいよ」 正也は悠然と微笑んだ。 「決着をつけよう」 「決着って……」 信也が戸惑っていると、ガラスが吹き飛んだ音が聞こえたのか、監視役が2 人駆け込んできた。 「脱走だ!」 監視役は信也を拘束しようとしたのだが。 「ジャマをするな!」 ばしんと、空気が震える。 衝撃波が走り、監視役は後ろの壁に激突して気を失った。 「正也?!」 「こんなご時世だ。珍しくもないだろ?」 片手をかざして、正也は平然としていた。 「早くこいよ、信也」 悠然と笑んで、手招きする。 「早く来ないと、俺、リョウを殺っちゃうかもしれないよ」 「!」 軽薄な語り口で言われた言葉に。 信也の瞳の中に、怒りが燃えた。 「お前が……リョウを?」 「ああ」 正也はあっさり頷いた。 「俺以外の男となんて寝るから、おしおき」 「だからって斬っていいわけがないだろう?!」 激高して、信也が正也につかみかかる。 「リョウは……リョウは何も悪くないんだぞ?! 他の事件もやったの全部お前 なのか?!」 「そうだよ。信也、剣に血を塗っといたら自分がやってるんじゃないかってあっ さり信じたよね」 正也がけらけらと笑った。 「相変わらず、バカだよな」 嘲笑った正也に、信也は駆け寄ると拳を突き出した。 正也が吹き飛ぶ。足元で、ぱきんとガラスの砕ける音。 「何でお前がっ!!」 「そう……何でだよねぇ」 正也は笑いながら体を起こした。 「俺は信也に6年前に殺されたはずなのに」 「!」 信也の顔が、悲痛に歪む。 正也は満足そうに笑むと、信也に見せるようにして左手を裏返した。 そこには、血星石が埋め込まれていた。 「俺は亜生命体として蘇ったんだよ」