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 件の秋本信也は、PC通信室に勤務する通信士である。
 名前を聞くと中央風だが、南部との混血で出身は南部。背が高いのと、こげ
茶色をした髪と瞳は南の系統だ。
 物忘れが激しい一面があるが、勤務態度も対人関係も至って良好である。金
銭面にも困っているところはない。
 そんな彼が何で日本刀を携えているのか。
 1つはガイアの、内戦という時勢のせいである。護身具を身につけて生活す
る人は多くないとはいえ、決して珍しくない。だから信也が日本刀を持って仕
事をしていても目立たないし、問題にならないのである。
 もう1つは表ざたにできない理由だ。
 信也が勤務するPCは合法組織だが、裏に非合法部隊『NONET』を有し
ている。
 『NONET』の仕事はPCの自衛団では対処できない亜生命体の駆除と、
血星石の破壊。
 信也はこの『NONET』のリーダーを任されているのだ。
 さっき会話をしていた絵麻も、翔も、リョウも、哉人も、シエルも、みんな
NONETの関係者である。
 仕事柄武器を扱うわけで、その信也の武器というのが日本刀なのだ。
 その話はまた後でするとして。
 その日も信也は、ごく普通に仕事についていた。
 PCには情報課もあるが、優先通信での情報は通信室に入ってくる。その情
報をどこに振り分ければいいかを瞬時に判断し、必要があれば別機関に通信を
入れる。
 その日も、信也は机に書類を山積みにして作業をしていた。
 忘れっぽい彼は仕事に手をつけては別の仕事に手を出し、またその仕事を止
めては元の仕事に手をつけ……といった具合で、作業がてんで進まないのだ。
 それで書類が机いっぱいになって、後から重要書類が紙束の中から出てきた
りする。
「……秋本」
 その日も、彼は主任に呼ばれるハメとなった。
「はいっ!」
 慌てたものだから机の書類が舞い上がる。主任の眉間にシワが刻まれ、周り 
の同僚がまたかといった面持ちで手をかしてくれる。
「すんません……俺、今度は何やらかしました?」
 主任は渋面のまま、手にしていた通信機を差し出した。
「警察部から通信だ」
「は?」
「お前を重要参考人として、話を聞きたいんだそうだ」
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