1.連続傷害事件 やすらかな闇が広がる、鎮魂の場所。 人がいつか必ずたどりつき、穏やかに眠りにつく場所。 その鎮魂の場所で、ある『思い』は眠れずに現世への執念を募らせていた。 どうして? どうして? どうして――眠らせてくれない? どうしてお前だけが幸せになる? 彼女の横で幸せになるのは、俺のはずだったのに……。 と、その『思い』の横に、黒衣を着て大鎌を持った人物が現れた。 「恨んでいるんだな?」 「恨み? 俺が?」 「恨んでいるから眠れない。なら、その思いを断ち切ってくればいい」 「けれど、俺の時間はもう終わって……」 黒衣の人物は懐から小さな石を取り出すと、その『思い』に埋め込んだ。 すると、みるみるうちに『思い』は人型を取りはじめる。 「行きなさい」 黒衣の人物は闇を大鎌で切り開くと、道を示した。 「行って、血を流し、憎い相手に復讐するんだ」 今や人間の姿となった『思い』は、開けた白い空間めがけてその身を躍らせ た。