絵麻達が待ち合わせの場所に戻ると、他のメンバーは既に戻って来ていた。 「遅い」 哉人がぼそっと文句をつける。 「ごめんね。荷物が重くって」 「何をどれだけ買ったの……?」 絵麻の抱える荷物の多さに、全員が目を丸くする。 「欲しい物がいっぱいあって」 「面白かったぜ。こいつのお嬢さんっぷりは」 シエルが自分の荷物を地面に下ろしながら言う。 「わたし、そんなにお嬢さん?」 『うん』 間髪いれず、シエルと唯美がダブルで肯定してきた。 「絵麻と組まされないでよかったよ」 哉人がやれやれといった感じで伸びをする。その後で、一言付け加えて。 「ま、こっちも大概お坊ちゃんだったけど」 「哉人が場慣れしすぎてるんだよっ」 「?」 「ほら。さっさと荷物を片付ける」 ケンカになりかけた雰囲気を信也が止める。 「片付けるって……コインロッカー?」 「別にそれでもいいんだけどな。流石に量があるから」 確かに、全員が2袋は荷物を抱えている。 「唯美、頼む」 「りょーかい」 唯美は全員から荷物を集めると、1ヶ所に置いて水晶のスティックを向けた。 写真のフラッシュをたく様に光が溢れて、荷物が消える。 「何をやったの?」 「荷物だけ瞬間移動。第8寮のテーブルの上に乗せといた」 帽子を直しながら事もなげに言う唯美に、絵麻はぽつりと呟いた。 「便利よね……」 昼ごはんは皆でガイアの郷土料理の店に行った。 この街は何でも物が溢れている。食事のできる店なんてエヴァーピースには PCの食堂くらいしかないのだが、ここには何件も何件も飲食店が軒を連ねて いた。 そういう光景が、絵麻は今までは当たり前だと思ってきた。 けれど。 今ではその光景の裏を見てしまう。 料理は美味しかった。味を覚えて、いくつか自分でも作ってみたいと思えた。 でも、いちばん印象に残ったのは、店を出た時に覗いた路地裏で、薄汚れた 顔の子供達が店のゴミ箱から残飯を漁って、店主に怒られている光景だった。 「……」 ふと、今まで思い出さなかった両親の顔が浮かぶ。 恵まれた日本にいるのだから大丈夫だと、自分と姉とを祖母に預けて海外の、 内戦地域に行った両親。 2人は、もしかしたらこの光景を知っていたのではないだろうか。 だから救おうとした。だから変えるために恵まれた日本から出て行った。 絵麻は、自分1人の力では変えられないことに気づいている。翔やリリィに 助力を願ったとして、変わらないだろう。 両親は、たった2人で変えようとしたのだ。大きな組織の中にいたのだとし ても。 家庭を顧みなかったことは確かに悪いことだと思う。 けれど、絵麻は両親を一方的に責めることはできないと感じていた。