次の場面は、研究所だった。
「いたい、よ……痛いよぅ」
小さな男の子が泣いている。6歳くらいだろうか? 青色がかった黒髪の、
女の子と間違えそうな容貌の子だ。
ぶかぶかの白衣を着ていて。その白衣は前の部分が大きく焼け焦げている。
焼けているのは白衣だけではない。
男の子の服も、髪も。周囲に配置されていたらしき実験道具や机までもが、
何らかの爆発にあったように根こそぎ焼かれ、吹き飛んでいる。
中心にいる男の子が無事なのが不思議なくらいに。
いや、男の子は無事ではあるが無傷ではなかった。顔の前にかざされた両手
が、直視できないほど真っ赤に焼け爛れている。
「痛いよ……お母さん……お父さん……」
その子供を遠まきにするようにして、白衣の研究者たちがぼそぼそと話をし
ていた。
「あの子、所長の3番目の子供だよな?」
「高原博士の『Project“FLY”』の被験体だろ?」
「さすがは天才遺伝子工学者、高原真貴……ってとこか」
「所長と高原博士は?」
「さっきの爆発の研究だって。上手くすれば実用化できるかもしれないからな。
データ取るだけとって、さっさとラボの方に戻って行っただろう?」
「子供を放ってか?」
「いいじゃないか。所詮、被験体なんだし」
「それもそうだな」
手を灼いた痛みに泣き続ける子供に、誰も手をかそうとしない。
「どうして……どうして助けてくれないの? ぼくが、悪い子だから? ぼく
が、いつもいつもこわしているから? だって、そうすればよってきてくれた
じゃない。ぼくをみてくれたじゃない。なのに、どうして……?」
そこで、場面がぱちりと切り替わった。