「……」
ゆっくりと目を開ける。
視界がぼんやりとぼやけていて、周りがよく見えない。
それが自分の目にたまった涙のせいだとは、しばらく絵麻は気づかなかった。
「ゆ……め?」
絵麻は涙をぬぐい、すっかり冷たくなった頬に手をあてた。
ベッドの上で膝を抱え、少し考えた後で静かに首を振る。
――あれは、現実だ。
何カ月か前、絵麻が実際にこの身に体験したこと。
実の姉に殺されるという、悲劇。
確か、ペンダントをめぐってのケンカが発端だった。絵麻が大切にしていた
祖母の形見のペンダントを、結女が勝手に自分の物として持ち出したのだ。
絵麻が両親にも隠していた、大切な大切なペンダントだったのに。
その鎖で殺されるなんて。
「わたし……死んだんだよね」
しばらく泣いた後で、絵麻はぽつりと呟く。
そう。
死んだはずなのだ。
あの時、息の根と共に全てを絶たれた。絵麻は死んだはずだった。
じゃあ、ここにいる自分は?
「わたしは……何?」
ぞくりと、全身が総毛だつ感触。
幽霊? ゾンビ?
体を見てみるが、今までの16年間となんら変わったところはない。
「……」
その時、部屋のドアがキイッときしんで、客を迎え入れた。
廊下からの明かりに、純金の髪が反射する。
「リリィ」
「・・・・・・・・?」
リリィは絵麻が目を覚ましていたことに驚いたようだった。
「・・・・・・? ・・・・・・?」
「リリィは……わたしが見えるよね」
唐突にそう言った絵麻に、リリィは混乱したようだった。
「?」
「ねえ、リリィ」
「・・?」
「自分が死んだはずなのに生きているっていうことが、ガイアではあるの?」
リリィの表情に、混乱の色合いが増していく。
それでも絵麻はたたみかけるように問いかけた。
「教えて? じゃないとわたし狂っちゃうよ。わたしは何なの? あの時確か
に死んだはずなのに。どうしてわたしはここにいるの?!」
絵麻の声はほとんど悲鳴に近かった。