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「ね、プレートって何?」
  通信を切った後で、絵麻はシエルに聞いてみた。
「プレートって、さっきの?」
「うん」
  シエルはどこか照れたような顔になって。
「ずっと前の学校の図工の時間にな、木を使った作品を作ろうっていうのがあっ
たんだ。
 その時にオレが作ったやつ。木を丸くきって、校庭に広がってた石を磨いて
はめこんで、名前彫ってって」
「それ、アテネちゃんにあげたの?」
「おお。あいつに何か可愛いものあげたくってな。本当は装身用のメダルを作
りたかったんだけど」
  全然上手くは作れなかったけどと、シエルが頭をかく。
  その仕草や表情はいつもの明るさを取り戻していて。
「あんた、ひょっとしてシスコン?」
「え?!」
  ソファの後ろから身を乗り出していた唯美が、ぼそっとつっこむ。
「孤児院でいちばん可愛い子だったって自分でゆーし……」
「だって、アテネは本当に可愛いんだぞ?  絵麻だって哉人だってみただろ?」
「すごく可愛い子だったよ」
「それはいいとして、自分で言う?  っていってんのよ」
  唯美は唇をにやっとさせた。
「フツーは言わないわよね。ね、お兄ちゃん」
「金の次は妹か」
  哉人が顔はパソコンに向かいながら、しれっと付け加える。
「ゼニコンにシスコン。語呂がいいじゃん」
「あのな……」
「孤児院の子たちがこの事知ったらどんな顔するかねー。見てみたいもんだ」
「からかうなよ」
  シエルは唯美の帽子をひったくろうとしたのだが、唯美がかわしたせいでバ
ランスを崩し、ソファに頭から突っ込んでしまった。
「ってて……」
「アハハ」
  絵麻と唯美が同時に笑い出す。
(なんか、久しぶりだな……)
  そう思うと、よけいに笑いがこみあげてきて、絵麻は思いっきり笑っていた。
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