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【転章】

  Mr.PEACEは東部に急遽もうけられた投降兵用の独房の一室に足を運
んでいた。
  窓はなく、光は一切入らない。
  じめじめとした空気に鬱屈を覚えながら、Mr.PEACEは目当ての部屋
へと踏み込んだ。
「やあ。気分はどうだ?」
  看取にドアを開けさせ、中の人物に声をかける。
  が、相手はあいさつを返さなかった。
  周囲の闇に溶け込むような黒衣の軍服を着た人物だった。それはすなわち、
この人物が武装集団の人間であることを現している。
「今日はおまえと取り引きしにきたんだ」
「……取り引き?」
  無反応だった相手が、僅かに瞳をあげた。
  着ている軍服と同じ、黒曜石のごとき漆黒の目。
「おまえは『特殊能力者』らしいな。何十人という自衛団をたった1人で、パ 
ワーストーンも使わずに殺したらしいじゃないか」
  そのつややかな目から視線を露骨に外しながら、Mrは続けた。
「……」
「その力を、PCに使わないか?」
「……」
「協力するのなら住む場所と食べる物には不自由しないことを約束しよう。
  しかし、協力しないというのなら、この場で首を斬る」
「……」
「死んでしまえば、『さがしもの』は見つからないだろう?」
「!」
  その時、終始無表情だった軍服の人物の顔に、はじめて動揺が走った。
「……わかった」
「錠を外してやれ」
  Mrは看取に命じ、軍服の人物を拘束していた枷を解かせた。
「おれは何をすればいいんだ?」
「まずはパワーストーンとの同調からはじめる」
  Mrは軍服の人物に背を向けながら言った。
「この先どうなるかは見物だな……『NONET』」
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