5.悲劇的結末 それから、時間はとても穏やかに流れた。 「はい。同調してみて」 パワーストーン要請講座、本日の講師は病院が夜勤のリョウ。 絵麻はペンダントを握りしめると、大きく深呼吸した。 心を楽にしていた方がやりやすいことを最近発見したのである。 握られた青い石から、虹色の輝きがこぼれる。それは瞬くほどの間に絵麻の 体をおおい、ちょうどシャボン玉に包まれているような感じになった。 「早くなったじゃない」 「これで同調なの?」 「オーラが体のまわりを覆ったら完璧。ちょっと見てて」 リョウは言うと、いきなり鎖を具現化し、絵麻に向けて振り下ろした。 「やっ……!!」 衝撃を恐れ、絵麻は体をすくめる。 カンッ! が、ガラス戸に小石が跳ねるような音がして、鎖は絵麻の体に触れる前に弾 き返されていた。 「あれ?」 「上手くなったじゃない」 リョウが具現化していた細身の鎖を、自らのブレスレットに戻す。 「え? え? 何で? 何がどうなったの?」 「同調してると体の機能が上がるって話は聞いたでしょ? 防御力とかケタは ずれにあがってるのよ」 「へえ……」 「今ならここから首都まで走っても息切れしないだろうし、鉄板5枚くらい素 手でぶち割れるわよ」 「それ、ホント?」 思わず絵麻が笑った時だった。 パンッ! 乾いた音がして、庭に出ていた2人に、静電気のような衝撃が走った。 「痛っ」 「ったた……同調解けちゃったかな?」 「みたいね」 虹色の光はもう感じない。 「ま、爆発するよりマシよ。進歩したじゃない」 背の高いリョウが、絵麻の髪をごしごしと撫ぜてくれた。