外に出ると、そこは結構な騒ぎになっていた。 「哉人兄ちゃん、ぼくにヨーヨー貸して!」 「見て見て! 僕できるようになったよ」 「それよりベーゴマやろうよ!」 子供が哉人の周りにむらがっている。 「オレが相手してやろうか?」 「シエル兄ちゃん、できるの?」 「できるさ」 「でもこの前、哉人兄ちゃんに負けてたよね」 「あの時はオレが手加減したの」 「……強がりいってやんの」 「言ったな?! なんなら勝負するか? ディーン、コマ貸してくれよ」 合いの手をいれたシエルを巻き込んで、結構なイベントに発展しつつあった。 「唯美お姉ちゃん」 片目に布をあてたフォルテは、とことこと唯美のほうに歩み寄っていた。 「なに?」 「フォルテ、今日はあてるよ。唯美お姉ちゃんのコイン」 「そう簡単には当てられないわよ」 唯美はポケットからコインを出すと、集まって来た子供たちに示した。 「はい。これは普通の1フェオです。いつもの通り、何もヘンじゃないよね」 「うん」 「じゃ、このコインをはじきまーす」 唯美は指先で器用にコインを弾き上げると、右手でつかんだ。 「さて、コインは今どこに行ったでしょう?」 「右手の中!」 「違うよ、左手でしょ?」 「靴の中の時もあったよね」 「みんなハズレ。正解は……帽子の中でした♪」 唯美がかぶっていた赤い野球帽を脱ぐ。その中に、先程の銅貨があった。 「え?!」 思わず絵麻は目をうたがった。 「面白いでしょう? いつも不思議なところからコインが出て来るの」 横でシスターが笑う。 「もう1回! 唯美お姉ちゃん、もう1回やって?」 「いいよ? でも当たるかな?」 強気な言葉も控えめで、唯美の態度はまるで別人のように優しかった。