ここでようやく会話が冒頭に戻る。 「入れるって、その子を?」 口をはさんだのは、リョウの隣にいた青年の方だった。 年は翔とあまり変わらないだろう。短く刈った髪は希有なこげ茶色で、瞳も 同じ色をしている。耳には3連ピアス。シャツとジーンズを無造作に着こんで いて、座っていてもわかるほど長身だった。 「Mr.PEACE直々の指示だよ」 「えっと……その子、エリだっけ?」 「絵麻……」 「あ、そっか」 「何もこの場でボケなくても……」 横にいたリョウが呆れ顔でこぼす。 「で、絵麻はどうしたいの?」 「え?」 話を振られて、絵麻はきょとんと目を見張った。 「ここは危ないのよ。見たでしょ?」 「あの、わたし……ここにいたいんだけど」 絵麻は2人の顔を交互に見ながら言った。 「けど……」 リョウはちらちらと隣に座る青年に視線を送っていたのだが、本人はその視 線を意に介していないようで。 「本人がいたいっていうんなら別に反対することもないだろ」 あっさり言って、絵麻に手を差し出した。 「秋本信也。よろしく」 「よろしくお願いします」 屈託のない信也の声に、絵麻は安堵して手を差し出す。 「ちょっと待って」 その時、横からとがめるような声が入った。 絵麻たちのやりとりを少し離れた席からずっと見ていた少年が口をはさんだ。 明るいプラチナブロンドの髪をした、外国人の少年だ。 瞳は海のような青で、フリース地のパーカーを無造作に着ている。 はじめて会った時、絵麻はその髪の色に気をとられていたのだが、今はパー カーの右袖……中身がなくただだらしなく垂れ下がった右腕部分が気になって いた。 (わざと着くずしてるのかな……) 「シエル?」 「その子、入れるんだろ? 報酬どうなんの?」 青い瞳が、刺すような光を宿して絵麻を見ている。 「報酬?」