Love&Peace1部1章6

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ふわふわ……身体が浮く感覚がする。
絵麻はぼんやりと目をあけた。
そこは真っ暗な闇の中で、目をこらしても何も見えない。感じない。
(……?)
頭の中で5W1Hがゆっくり整理されていく。
わたしは……お姉さんに殺されたんだ。
道具みたいに利用されて……。
それをゆっくりと認識すると、絵麻は哀しくなった。
(どうして……こんな……)
両手で顔を覆う。
指のすきまから涙がこぼれて、暗闇の中で微かな光を放った。
その時だった。
『絵麻ちゃん……』
どこからか、絵麻を呼ぶ声が暗闇に響いた。
慈愛に満ちた、全てを包みこんでくれるように暖かく、優しい声。
「え……?!」
その声に、泣いていた絵麻ははっとして顔を上げた。
『絵麻ちゃん、泣かないで……』
「この声……」
絵麻は弾かれたように暗闇を見回した。
自分を『絵麻ちゃん』と呼ぶ人は、知っている限りたった1人だけだ。
こんなに優しく自分を呼んでくれるのは……。
「まさか……お祖母ちゃん?!」
『絵麻ちゃん……』
声が微笑を含む。
「やっぱり……お祖母ちゃんなのね! どこにいるの? お祖母ちゃん!!」
絵麻は声の限りに呼んだのだが、それはこだまのように暗闇の中を反響するだけだった。
「お祖母ちゃん、会いたいよ! 死んだんなら、わたしを側にいさせて……」
『絵麻ちゃん、それはまだダメ……』
祖母の声が静かに否定する。
「どうして? わたしは……死んだんだよ」
『まだ終われないわ……貴女にだけ出来ることが待ってる……』
「何それ……?」
『絵麻ちゃん、お願いよ……どうか前向きさを失わないで』
最後の方は消え入るようにか細い声だった。
「お祖母ちゃん?!」
絵麻は嫌がるように首を振った。
「嫌! もうどこかに行ったりしないで!! ずっと一緒にいてよ!!」
『光……が……あなたに優しくありますように……』
祈るような旋律が、暗闇にすっと溶ける。
祖母がいなくなったのを絵麻は感じていた。
「いやあっ! お祖母ちゃん?! お祖母ちゃん!!」
絵麻は喉が壊れそうなくらいに絶叫する。
その瞬間、絵麻はがくんと自分の身体が落下するのを感じた。
「えっ……?」
視界がぐるぐると回転して、思わず目を閉じる。
目を開いた時、絵麻の身体は地面めがけて落下していた。
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