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3.復讐

「きゃああっ!」
 2階から鋭い悲鳴がして、リビングにいたメンバーは顔を見合わせた。
「リョウ?!」
 絵麻は慌ててリビングから飛び出すと、階段を駆け上がる。と、2階の廊下
にどろりとした赤いものが流れていた。
「これは……?」
 思わず絵麻は足をとめる。
 後から来た翔がそれを覗き込み、その赤いものが信也の部屋のドアの下の隙
間から流れているのを見て取ると、彼は靴が汚れるのも構わず絵麻を押しのけ 
て信也の部屋のドアに体当たりした。
「リョウ! 信也!」
 ドアはきしんだが、開かなかった。
「シエル、哉人、封隼! 手伝ってくれ!」
 人を集め、体当たりを繰り返す。何回目かの衝突で、ドアはばきりと音をた
てて壊れた。
 そのまま、翔は部屋の中になだれ込む。
 絵麻も、後から部屋を覗き込む。
 床に、リョウが倒れていた。
 壁やチェストには血痕が点々と飛び、床にはおびただしい量の血が流れてい
る。
 さっきの赤いものの正体。それは、リョウの血だったのだ。
 そして、ベッドの上には――血まみれの日本刀を前に呆然とする信也の姿が
あった。
「リョウっ!!」
 翔がリョウを抱き起こす。
「これだけ出血してたらやばい……誰か、医者呼んできてくれ!」
「アタシ、連絡してくる!」
 唯美が踵を返して、階下の通信機に走っていく。
「とりあえず応急処置だ。絵麻、救急箱取って来て。シエルと哉人はタオルあ
るだけ集めてきて。アテネ、封隼、2人は僕より応急処置に詳しいよね?!」
「止血の方法は習ったけど……」
「切ってる位置が危なすぎる。動脈だ」
「とりあえず、シーツで縛って……信也、ぼーっとしてないで協力しろっ!」
 翔が怒号を飛ばす。
「あ……あ……」
 その時になって、やっと信也の顔に感情が浮かんだ。
 驚きと、不安。すがるような色がこげ茶の瞳ににじむ。
「リョウ!!」
 信也は翔を押しのけると、恋人をその腕に抱きしめた。
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