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2.光と陰
 10人がついたのは、ちょうど駅の建物の陰になった、目立たないスペースだっ
た。
 目が慣れてとたんに見えるのは、近代的な駅舎の建物。レンガと白い壁で、
可愛いらしい感じに作られている。
「わー。この駅可愛いっ」
「こら、騒がないの」
 リョウに注意されたので、絵麻は口をつぐむと、そっと周囲を見回してみた。
 大きな通りに人があふれている。
 エヴァーピースの大通りもPC本部に勤める人で賑やかだが、賑やかさの根
本が異なっている。広さはいつもの大通りの倍はあるだろうか。石畳できれい
に舗装された通りには賑やかな声があちこちから響いている。
 歩いている人も黒髪、金髪、茶髪、プラチナと、5都の色をすぐにそろえる
事が出来る。
それらの人たちが皆、楽しそうに通りを歩いていた。
「凄い……渋谷か原宿みたい……」
「シブヤ? ハラジュク?」
「あ。わたしの前にいた場所の地名」
「ふぅん……」
「それより、とっとと買い物済ませようぜ?!」
 哉人がどこか苛立ったように言う。まあ、この人がいらいらしているのはい
つもの事なのだが。
「えっと、食料品が絵麻と唯美とシエル。日用品がリリィと封隼。医薬品がリョ
ウとアテネと信也。で、僕と哉人がOA機器の周辺その他。ここにリスト作っ
といたから、その品物は寮費で落とす。他に欲しいもの買ったら自腹ね」
 翔が買い物のリストと、店までの地図を配って回す。この人は本当に用意が
いい。
「連絡は通信機持ってるな? 12時にまたここに集まって。一度荷物を寮に
戻して、それから昼飯食って、午後から自由行動」
 信也がメモ帳をめくりながら言う。
「よっしゃ」
「でも、帰ってから荷物の仕分けとかするから、6時までね? またここに集
合だっけ?」
「ああ」
「じゃ、各自中央首都の休日を楽しむとするかっ」
 信也がそう言って、ぱたりとメモ帳を閉じた。
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