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「う……」
 全員がリビングで話している間、絵麻は自分の部屋のベッドで眠っていたの
だが、その眉間にはしわが刻まれていた。
 つらそうに顔をしかめて。
 見ている夢はあの時の再現リプレイだ。
『これ、返して欲しかったのよね』
 美しい造作をみにくい笑いで歪めた姉の顔。
 ペンダントを首に巻きつけられた。最初は何をされるかわからなかった。
『お姉さん……?』
『はい、返してあげる』
 姉の笑いが残忍に歪む。次の瞬間、細い鎖がきりきりと首にくいこんだ。
『えっ……?!』
 息苦しさが喉の奥からこみあげてくる。
 姉の、殺戮の悦びに狂った瞳が自分を見下ろしている。
『深川結女ゆめの妹、謎の絞殺死体で発見! 呪われた一族の謎……ワイドショーの
いいネタになれるじゃない。よかったわね』
 息苦しさに喘ぎ苦しむ妹を見下ろして、彼女は平然と笑っていた。
『ま、だ……利……用……する……の?』
『決まってるじゃない』
 そう断言した。実の妹を相手に。妹の命でさえ自分の道具であると。
『アンタは、アタシの人気を保つための道具の1つにすぎないんだから。勝手
がよかったからよく使ったけど……ま、利用期間切れってとこかしら』
 その表情は綺麗で、狂気に満ち満ちていた。
 これが姉の真の姿。
 この人が自分の姉。いつかはいとおしんでくれると、信じて待ち続けていた
人の正体。
(お姉さん……お姉さん、止めて!)
 絵麻は必死に手を持ち上げようとする。
『いい? 人って所詮は他人のこと、道具としてしか見ていないのよ。使い勝
手がよければ利用するし、悪くなれば捨てる……常識よ。覚えときなさい』
『!』
 絵麻が必死に持ち上げた手を、結女は冷たく振りはらった。
『さよなら、絵麻』
 冷たい笑い。鎖が喉を切断せよとばかりにくいこんでくる。
(お姉さん! 止めて……止めて! 殺さないで!)
 絵麻は声をあげようとするのだが、もう口に酸素が入ってこない。
(お姉さん、わたしを殺さないで!!)
『お、ねえ、さ……』

 ―――わたしを殺さないで!!

 その言葉を最後に、視界が一瞬青く光って……暗転した。
 何も見えない。何も聞こえない。さっきまでの息苦しさもまるで感じない。
 『肉体』というものから、解き放たれる感触がした。
 そう。絵麻は……死んだのだ。
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