翌日、Mr.PEACE宛てに1通のメールが届いた。 それは今回の1軒に対する事細かな状況報告で、最後は封隼がひどいケガを 負ったこととそれを治療するためにしばらく第8寮で引き取った後、NONE Tに正式に加入させるという記述で締めくくられていた。 「この文章は翔だな。署名は信也になってるが」 「そうですね」 書類を整理していたユーリが短く言う。 「これであの子のおうちは決まったわけで」 「そうだな」 今度はMrが短く言う。 「……これでよかったんですか?」 ユーリがMrをのぞきこむように言った。 「どういう意味だ」 「あなたは、これを望んだんですか?」 「……」 Mrはしばらく沈黙してから、口を開いた。 「そうだな。望まなかったといえば嘘になるが……」 「Mrも人が悪い。 最初から、封隼くんは唯美ちゃんの弟だと知っていたのでしょう?」 Mrがククッと、喉の奥で笑う。 「感動の対面をしてもらおうと思っただけさ」 「本当にそうなんですか?」 「封隼が死のうと生きようと、彼女の気持ちを揺さぶれればそれでよかったん だ。 まあ御の字だな」 Mrは机に置かれた懐中時計から、横に置かれた写真立てへと視線を移した。 「もうすぐだよ。もうすぐ解放の時が訪れる……」 写真立ての中では、亜麻色の髪の女性が笑っていた。