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「たまに来たかと思えば大量の人数で、逆に孤児院用のお茶まで飲み尽くして
しまうの。水で十分なのかしらね」
「あ、だったらあの花を煎じるのはどうですか?」
  絵麻は窓から見えていた、森の近くに咲いている花をさした。
  女の子たちが数人、その花をつんで遊んでいる。
「あの花がどうかした?」
「ジャスミンに似てる。ジャスミンの花は乾かして煎じるとお茶になるんです
よ。
 これと同じで、少し甘い味。歩いてて結構見たから、かなりの量が作れるん
じゃないかな」
「貴方はよく知っているわね」
  シスターは感心したように微笑んだ。
「わたしも少し作ろうと思ってたから、作ってもってきますよ」
「いいの?」
「はい」
「貴方たちは本当に頑張ってくれて、助かるわ」
「そんな……わたしなんか、カノンやリリィ達にくらべたら」
「神様の教えをいいように解釈して、必要な時にだけ神頼みする人達が多いの
に、貴方たちは私たちを助けてくれる」
  シスターは遠くを見るように絵麻を見た。
「第8寮の子たちはPCの仕事を遅刻したり無断欠勤することが多い変わり者
だってみんな言うけど……」
  絵麻は吹き出しそうになったお茶をあやうく飲み込んだ。
  まさかその無断欠勤しているぶんでモンスター退治・武装集団退治をしてい
るとは誰が信じるだろう。
「いい子たちよね」
「はい」
「リョウはお金を取らずに子供達を診てくれるし、翔は学者さんだから、パワ
ーストーンの知識に詳しいでしょう?  信也はあんな感じで通信機が得意だし、
リリィは縫い物が上手で。シエル達は子供達とよく遊んでくれるし」
「え?」
  絵麻は思わず声をあげ、シスターを見つめ返した。
「あら、知らなかったの?」
  シスターは目を細め、時計を見た。
「そろそろ来るんじゃないかな」
「そろそろ?」
「PCが終わるこの時間になるとよく来るのよ。それで遊んで行ってくれるの」
  ちょうどその時、窓の外から歓声が聞こえて来た。
「ほら、来たみたい。行ってみる?」
  シスターが自分の腕で車椅子を動かす。タイヤがきしむ音を聞きつけ、台所
にいた女の子がすかさず走り寄ると手を貸した。
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