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  絵麻は頷いた。実際は日本人だが、とりあえず外見の似ている中央人を装う
ことになっているし、実際、登録書類にもそう書いた。(書いたのは翔だが)
「あなたは、西部の人?」
  三つ編みにされた髪は鈍い金髪。くるくる感情をのぞかせる瞳は緑。
  翔が言っていた特徴にぴったりの容姿だった。
「そうよ」
  女の子はにこっと笑った。
「あたし、カノンっていうの。カノン=リュクルゴス。あなたは?」
「絵麻だよ。深川絵麻」
「エマ?  西部みたいな名前なのね」
「そうなのかな。西部ってどんな町なの?」
「あたしが住んでたバーミリオンは鉱山の町よ。パワーストーンを発掘して、
それを売って利益を得るの」
「鉱山?」
「子供のころはね、廃鉱になった洞窟でよく度胸試しして遊んだのよ。キラキ
ラ光るパワーストーンのカケラをみつけたりね」
「へえ……」
「ま、敵襲で鉱山は一時閉鎖、住民は疎開することになっちゃったけど。
  それより」
  カノンは興味深そうに絵麻の顔をのぞきこんだ。
「絵麻はどうして買い物なんか教わってるの?  そもそもどうして第8寮にい
るの?」
「それは……」
  絵麻がいいよどんだ時だった。
「・・!」
  ひゅっと空気を切る音が聞こえて、もう残り少なくなった残照に金色の光が
反射した。
  輝く金髪をした、絶世の美人。
「リリィ!」
  彼女は無言で、手にしたメモ帳を絵麻につきつけた。
  どうやら、第1声は決めてきたらしい。
「え……えっと……」
「『どうしていきなり出て行ったの?  みんな心配してるよ』って」
  横にいた女の子──カノンが訳してくれる。
  その後で、カノンはリリィに顔を向けて、にこっと笑った。
「久しぶり。リリィ」
「・・・」
  リリィも微笑みを浮かべた。
「あれ、知り合いなの?」
「・・」
「知り合いだよね。ね、氷上の美少女(アイスオンビューティ)さん?」
  カノンは照れたような、それでいてちゃかすような笑みを浮かべた。
「氷上の美少女?」
  聞き馴れない言葉に、絵麻はぎょっとなる。
「リリィって氷みたいな感じでしょ?  それでそう呼ばれてるんだよ」
  確かに、言葉なく凛としている姿は氷を連想させる。
  まじまじとみつめる絵麻の視線を堂々と受け止めて微笑むリリィには、そう 
いう雰囲気が似合う。
「この子を迎えにきたの?」
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