Mr.PEACEは執務室で懐中時計を前に、腕を組んでいた。 「……Mr」 コーヒーを入れて差し出しながら、ユーリが尋ねる。 「貴方は、何を見ているのですか? 3年前のあの日から……」 「ユーリ」 重い口調で、Mr.PEACEが告げる。 「はい」 「時が満ちたという話は、したな」 「ええ」 Mr.PEACEは目を閉じて。一瞬の後、すぐに双眸を開いて。 「運命の歯車が回る」 「……」 「100年前に成し得なかった『解放』を私がやり遂げる。平和姫の命にかけ て」 「……貴方は、彼女を殺すんですね」 「私に、もう失う物はない」 きっぱりとした口調で言い切ったMr.PEACEの言葉に、ユーリの表情 に憂いが募っていく。 (貴方は、気づいているのですか……それがどんなに残酷なことなのか) 「ユーリ。私は、解放されたいんだよ。この定められた業から」 「ええ、わかっています。わかっています。私も、伊織も、解放されたいんで す」 ユーリは目を伏せた。 「なら、従え」 「はい。仰せのままに」
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