ふわふわと、身体が浮く感覚がする。 絵麻はぼんやりと目をあけた。 そこは真っ暗な闇の中。 目をこらしても何も見えない。感じない。 (……?) 頭の中で、何が起きたかがゆっくりと整理されていく。 (ああ……そうだ) 絵麻は息をついた。 ここは、あの時の場所。 ガイアに行く前に来た場所。 自分は平和姫を呼んで死んだ。だから、またここにいる。 『絵麻ちゃん……』 あの時と同じように、自分を呼ぶ声がした。 「お祖母ちゃん。いるんでしょう?」 絵麻は微笑んだ。 「今度は、会ってくれるんでしょ?」 闇が優しい笑いを含み、ほどなくして、絵麻の前に舞由が現れた。 「お祖母ちゃん。やっと会えた」 絵麻は舞由の腕に飛び込んだ。 『絵麻ちゃん……ごめんなさい。ごめんなさい』 舞由は絵麻を抱きしめて、詫び続けた。 『あなたを傷つけてしまった……』 「ううん。いいの」 絵麻は言った。 ガイアに行けたおかげで、たくさんの大切な人ができた。 恋をすることもできた。 だから、わたしは幸せだった。とても幸せだった。 「お祖母ちゃん、わたしを迎えに来てくれたんでしょう? 今度こそ、一緒 に連れて行ってね」 そういう絵麻に、舞由はひとつの事を告げた。 『ここは、どこでもない場所なの』 「『どこでもない場所』?」 舞由は頷いて。 『どこでもないから、どこにでもいける。私と一緒に来てもいい。現代に 帰ったっていい』 絵麻ちゃん、貴方はどこに行きたい? 舞由にそう問われ、絵麻は目を瞬いた。 そして、言った。 「わたしは――」 絵麻の答えを聞いた舞由は、満足げに微笑んだ。 『いきなさい』