もっと頼りにして

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もっと頼りにして

 封隼は自分がまだたったの十三歳だということをあまり信じていない。成人なのだが、まだその基準に達したばかりであり、大人の扱いをされても世間での立場はまだまだ頼りない。加えて武装集団出身の常識知らずでは、立場なんてものはほぼないと言ってもいいだろう。むしろ立っていられるだけましだった。
 少しでも強く見せたくて、本当の名前も年齢もわかった今でも、封隼は自分は十五歳だと年を上に偽ったままにしている。たかが二年だし、そんなに何かが急に変わるわけでもないのだが、少なくとも十三歳であるというよりまだまともに振る舞える気がする。
 友人達から見れば封隼のその行動は、わかるようでわからないという意見が大半だった。同じように両親を失って、保護者のない状態で過ごしてきたシエルや哉人には理解の範疇のようだ。唯美も同じようなものなのだが、封隼の実姉である彼女としては「今はもう自分たちがいるのだから、背伸びは止めて十三なら十三らしくしろ」ということらしい。いちばん年下なんだからそれ相応でいいじゃないかと絵麻には言われる。アテネに至っては「アテネの方がお姉ちゃん!」と勝手に姉になられて頭を撫でられる。
 それは結構、むっとする事実だった。自分がアテネより年下だなんて納得がいかない。絵麻よりも下というのも同じだ。少なくともこの二人より精神年齢は上だろう。それなのにまるで孤児院の子にするように髪をぐしゃぐしゃに撫でられたり、ご飯粒がついてるよと苦笑いで取られたくはないわけだ。自分は、子供じゃない。どんな戦場でも生き残ってきた立派な大人だ。
 何かのはずみで、リリィにそれを言ったことがある。リリィは途切れ途切れの話を辛抱強く聞き終わったあとで、苦笑いして封隼の、今自分が包帯を巻き付けたばかりの腕を叩いた。走った痛みに封隼は思わず眉を寄せる。
『そんなに言うのなら、まずは怪我するのを止めて頂戴』
 あなたに任せると自分のことを省みてくれないから、だからみんな心配なの。私だって心配。自分も大事にできない人を、他人が頼りにして信用できるわけがないでしょう?
 そうリリィに言われて、封隼は憮然とした。

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