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「はるかかなたがみえること……と。これで綴りあってるよな?」
  書き取りを見ていた信也が、リビングのパソコン画面に向かっていた翔に、
絵麻が書いたばかりの紙をさしだした。
「うん。合格」
  翔はざっと目を走らせると、絵麻に笑ってみせた。
「間違ったところはひとつもないよ。上等二重丸」
  絵麻は横で孤児院の子供に靴下を編んでいたリリィと目を合わせると、一緒 
に笑った。
「字、結構うまくなったじゃん」
「そう?」
「これなら簿記の仕事ができるな」
「あ……仕事決めなきゃいけないんだっけ」
  翔はパソコンを閉じると、絵麻に向き直った。
「絵麻、何の仕事がしたい?」
「何の仕事って……」
  そういえば、明確なビジョンを持ったことはなかった。
  ガーデニングなんて言っても通じそうにないし。
「何か得意なこととかは?」
「料理と庭いじりと掃除と洗濯と……」
「今やってる生活そのままだな」
  信也が喉の奥で笑う。
「Mrとユーリに相談して何か紹介してもらうつもりでいるけど、それだった
らPCの食堂の賄いとかでもいいか?」
「うん。わたしにできることだったら何でも」
「出来るんだったらここでずっと家事やって欲しいんだよね」
  翔が笑って話に入った。
「え?」
「だって、絵麻って凄く料理上手いし。よく気がつくし」
「翔は掃除まるごと押し付けてるもんな」
「ひどいな。信也だって頼むだろ?」
  2人のやりとりに、リリィが横でにこにこ笑っている。
「確かに、ここにも絵麻みたいな寮監配置してくれると助かるんだよな……」
「そうだ。お茶入れてくるね」
  絵麻は立ち上がると、台所に駆け込んだ。
  頬に手を当てると、そこから熱が伝わって来て、絵麻をくすぐったい気分に
させた。
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